時空建築幻視譚 マホロミ

2014.03.23  渡邉達朗

時空建築幻視譚 マホロミ

「時空建築幻視譚 マホロミ」は、ビッグコミックスピリッツにて2010年から不定期連載されている冬目景による漫画。先日3巻が発売されたばかりという相変わらずのスローペースだが、とても好きな作品なので紹介しておきたい。

主人公・土神東也は建築科の大学生1年生。解体中の洋館で謎の少女・真百合と出会い、「建物が記憶する思い出」を視る能力に目覚めた。建築を学び、建物たちの過去に触れるうちに、著名な建築士であった祖父の存在が気になり始めるというもの。

まず、全体に漂うノスタルジックな雰囲気が好ましい。和洋折衷を得意とする冬目景だけに、近代建築がとても魅力的に描かれている。英国人の血を引く女性の生家に纏わる話、60年前に大学の図書館で起こった悲劇、お坊ちゃん石蕗君と古い学生寮の話、バイト先の建築設計事務所の所長と名画座の話など、心に残るストーリーも多かった。

同じ能力があったという祖父と、祖父と浅からぬ縁のある真百合、幼馴染の卯も交えた恋愛関係も気になるところ。派手な謎解きなどは出てこないが、ゆっくりと流れる時間が心地よく、読後感は穏やかで少し切ない。古いものとそれにまつわる人の想いを大切にしている素敵な物語だと思う。

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時空建築幻視譚 マホロミ

2014.3.23

漫画