旅行中や美味しいものを食べるとき、普段の写真撮影はいつも持ち歩いているiPhone、ちょっとこだわった写真が撮りたいときはミラーレスを使っていた。
どちらもそれぞれ優れたところがあるのだが、ミラーレスは一眼レフよりも小型・軽量とはいえ普段持ち歩くにはやはり大げさで、レンズキャップを外すのが地味に面倒。スマートフォンの中では優れたカメラを搭載しているiPhoneも思うような写真が撮れないことが多く、なによりシャッター音がうるさい点が気になっていた。
そんななか急激に購入意欲がわいてきたのが、高級コンパクトデジタルカメラと呼ばれる商品だった。スマートフォンのカメラ機能の向上により、コンパクトデジタルカメラの需要は激減したが、近年はスマートフォンよりも遥かに高画質なものがいくつも登場している。自分がコンパクトデジタルカメラに求めるポイントを改めて検討してみると、以下のようになった。
必須要件
- 薄型、軽量(300g以下が理想)
- 大きいイメージセンサー(1インチ以上)
- 明るいレンズ
- 正確で速いオートフォーカス
- 短い最短撮影距離
- 見やすい液晶モニター
- Wi-Fiなどのネットワーク機能
- シャッター音がOFFにできる
必須ではないがあるといいもの
- 手振れ補正
- ローパスフィルター
- ファインダー
- バリアングル・チルト液晶
不要なもの
- 高倍率ズーム
- 動画性能
- 防水、防塵
- タッチパネル
ミラーレスや一眼レフはレンズ交換できることが前提になっているので、レンズと本体の設計は汎用性を求められる。それに比べてレンズ交換がないコンパクトデジタルカメラは、その機種専用のレンズとボディの組み合わせなので、小型・軽量かつギリギリの高画質設定が可能だ。
カメラの画質で一番影響の大きいのがイメージセンサーのサイズ。一般的なコンパクトデジタルカメラやスマートフォンに搭載されているような1/2.3型程度のイメージセンサーではやはり限界があり、きれいなボケのある写真などは撮れない。
高級コンパクトデジタルカメラとして最近主流のものは、その4倍も大きい1型のイメージセンサーを搭載しており、なかにはAPS-Cという一眼レフクラスの大きいセンサーを搭載している機種まである。自分が候補として検討した機種を以下に並べてみたが、どれも一長一短あり実に悩ましい選択となった。
APS-C(23.6×15.7mm)
- RICOH GR II(28mm、F2.8、251g)
- FUJIFILM X70(28mm、F2.8、340g)
- FUJIFILM X100F(35mm、F2、469g)
- Nikon COOLPIX A(28mm、F2.8、299g)
4/3型:フォーサーズ(17.3×13mm)
- LUMIX DMC-LX100(24-75mm、F1.7-2.8、393g)
1型(13.2×8.8mm)
- DSC-RX100(28-100mm、F1.8-4.9、240g)
- DSC-RX100M2(28-100mm、F1.8-4.9、281g)
- DSC-RX100M3(24-70mm、F1.8-2.8、290g)
- DSC-RX100M4(24-70mm、F1.8-2.8、298g)
- DSC-RX100M5(24-70mm、F1.8-2.8、299g)
- PowerShot G7 X Mark II(24-100mm、F1.8-2.8、319g)
- PowerShot G9 X Mark II(28-84mm、F2-4.9、206g)
- LUMIX DMC-LX9(24-72mm、F1.4-2.8、310g)
操作感などは実際に手に持ってみないとわからないので、カメラ屋を訪れていろいろ試したりしてみた。デザインや写りでいえば富士フイルムの「X100F」なんて本当に素晴らしいが、普段持ち歩くには重すぎることもよく理解できる。
当初一番惹かれたのは28mm単焦点の明るいレンズを搭載し、スナップカメラとして定評のあるリコーの「GR II」。今使っているミラーレスより大きいAPS-Cサイズのセンサーを搭載していることで、描写に関しては余裕のあるものになっておりボケも美しい。ズームが使えないなど玄人向け要素の多いカメラだが、この機能をこのサイズに収めたことは称賛に値する。
長所の多い素晴らしいカメラだが、もちろん短所もある。一つはオートフォーカスの精度が低く、室内など暗いところでは迷いまくる点。もう一つはボディ内部にゴミが入り込みやすく、センサーにゴミが入ってしまったらリコーの修理に出す必要がある点だ。気軽に持ち歩いて使いたいだけに、この弱点は購入を躊躇させるポイントとなった。
所有欲をくすぐるという意味ではソニーの「DSC-RX100M3」にも強く惹かれた。2012年の登場以来、絶大な支持を受けながら順当に進化している「DSC-RX100」の3代目モデルである。高解像度と高感度を両立した1.0型の裏面照射型Exmor R CMOSセンサーに加え、高速処理能力を誇る画像処理エンジン「BIONZ X」を搭載。高い描写性能で定評のある「ZEISSバリオ・ゾナーTレンズ」により、明るくノイズの少ない画像を撮影できる。
2016年に発売された5代目の「DSC-RX100M5」が最新となるこのRX100シリーズ。特筆すべきは旧4機種がいまだに現行品として販売されており、予算や性能に応じて機種を選べるという点だろう。高速オートフォーカスや優れた動画性能など、新しいものほど機能は増えるがその分値段も高くなるため、安価に購入できる初代の評判は今でも高い。写真で重要な要素となるレンズや画像処理エンジンはM3からM5まで変わっていないこともあり、自分にはM3が一番妥当と考えた。
ボディに収納できる高精細な有機ELファインダーまで搭載しており、まさに優等生といえる一台だと思う。実際に購入してみると、改めて非常に完成度の高い、買って間違いのない製品だと感じた。小さいボディに似合わず機能が豊富なので、これからじっくり使い込んでいこうと思う。