おっさんになった自分が心から楽しめるのか、プレイする前は不安だった「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」。暇を見つけてはちょこちょこ進めていくうちに、不安は杞憂にすぎなかったと思うようになった。そして今日ようやくクリアした感想は、「いくつになってもドラクエは面白いな。こんな素敵な物語、時間がなくてゲームなんて出来ないと思っている同世代の人にこそプレイして欲しい」というものだった。
2017年7月29日にスクウェア・エニックスより発売された本作はドラゴンクエストシリーズの第11作目。MMORPGだった前作と異なり、IX以前と同様のスタンドアローンRPGとなっている。PlayStation 4版とニンテンドー3DS版の2種類があり、どちらを購入するか悩んだのだが、せっかく最新作をプレイするのであればUnreal Engine 4による美麗なグラフィックも堪能したいと思いPS4版に決めた。
本作の舞台は命の大樹によって生み出されたロトゼタシアという世界。遠くにある山々や木々、小川や街並みなど、あらゆる部分が緻密かつドラクエらしく描かれた世界は本当に美しく、馬に乗って旅するだけでも楽しい。ドラクエといえば鳥山明がデザインした可愛らしいモンスターは外せないが、登場人物ふくめ上手に3D化されていて違和感は全くなかった。
プレイしていて感動したのは、昔と比べてとても遊びやすくなっていること。ゲームを再開するときにこれまでのあらすじを表示してくれたり、優秀なAIでオートバトルが楽チンだったり、どこでもルーラでテレポートできたりとゲーム進行が容易になる工夫が随所に感じられる。ローディング画面でまめちしきを表示してくれるのも、待ち時間をストレスなく過ごせるようにという配慮であり、こういう細かい心配りが遊んでいて本当に嬉しかった。ゲームバランス調整も完璧で、無駄なレベル上げなどまったく必要ない。
「ドラゴンクエストXI」には「過ぎ去りし時を求めて」というサブタイトルが付いているが、ここにゲームデザインとシナリオを担当した堀井雄二の思いが込められていたのだとクリア後に思い知らされた。ドラゴンクエストシリーズの物語をずっと紡いできたわけでマンネリ化してもおかしくないのだが、今作のストーリーはまさに白眉の出来で、これまでプレイしたどの作品より心揺さぶられた。仲間と一緒に旅をし、苦楽を共にしているような感覚はたまらないものがある。
ドラクエといえば、すぎやまこういちの曲も外せないだろう。「ドラゴンクエストXI」をスタートしたときに流れてくる曲がIからIIIで使用された曲のアレンジとなっていることに気づき、これだけでかなりグッときた。本作には新曲だけでなく、過去作の曲も数多く採用されており、とても懐かしい気持ちでプレイできる。今どきのゲームはフルボイスのものが多く、本作のように字幕のみのものは珍しいと思われるが、ドラクエに関してはとてもよい効果をあげていると感じた。
唯一の不満はオートカメラの動作が不安定なこと。カメラが回り込んだ結果どこにいるのか分からなくなったり、ぐるぐる回って酔ってしまったりすることがある。だが、そんなことは気にならないほど本作の物語は素晴らしく、音楽や映像も最高だった。ゲームといえばスマートフォンで気軽に遊べるソーシャルゲームが一般的になっている今だからこそ、ぜひ「ドラゴンクエストXI」もじっくりプレイしてみて欲しいと思う。