1963年に梅棹忠夫氏は「情報産業論」を発表し、物質やエネルギーを生産する従来の工業化社会とは異なって、情報産業は「情報」に価値を付加して売買する産業であり、工業社会における商品の概念や経済理論が通用しない、まったく新しい種類の産業であると規定した。
40年前に書かれた論文でありながら、現代の状況をこれほど的確に言い当てていることにまず驚きを隠せない。予言書として読んでもいいくらいだ。この本を読めば、なぜ物質としての商品を一つも販売していないGoogleという企業が、Microsoftをも脅かす存在になっているのかが理解できる。
また、氏の文章を読むとすぐに気づく特徴がある。使われている漢字が少ないのだ。漢字に関して、音でも訓でも読めるような場合には、曖昧さをさけるため、なるべくかなを使われるそうだ。ワープロの普及によって漢字の濃度が上昇した現代の文章に慣れた自分には新鮮で参考になった。
この本を薦めてくれた上司に感謝したい。