SNATCHER

2014.05.28  渡邉達朗

SNATCHER

「SNATCHER(スナッチャー)」は1988年にコナミから発売されたアドベンチャーゲーム。後に「METAL GEAR SOLID」で有名となる小島秀夫が監督した初期の作品であり、映画「ブレードランナー」をモチーフとしたサイバーパンクな世界が舞台となっている。

舞台は近未来のネオ・コウベ・シティ。この世界では人間を殺害し、その人物と入れ替わって潜伏している謎のバイオロイド「スナッチャー」が暗躍していた。プレイヤーは捜査官ギリアン・シードとなり、スナッチャーから人々を護りつつ、その正体を突き止めるべく奔走する。

現在のコナミは単なるゲーム制作会社ではなく、スポーツクラブの運営なども手掛ける大きなグループ企業であり、カジノ運営にも参画するといった話まで報道されている。しかしながら、子供のころファミコンを買ってもらうことが出来ず、MSXというパソコンでゲームを楽しんでいた自分にとっては、良質なゲームをたくさんリリースしてくれる素敵な会社というイメージだった。

「魔城伝説」「ガリウスの迷宮」「グラディウス」「グラディウス2」「沙羅曼陀」「パロディウス」「グーニーズ」「ツインビー」「イー・アル・カンフー」「悪魔城ドラキュラ」「夢大陸アドベンチャー」「METAL GEAR」などなど名作は数知れず、10倍カートリッジなど忘れられないアイテムもあるが、何より強く印象に残っているのが今回紹介する「スナッチャー」だ。

「スナッチャー」が発表された当時は、まだアメリカとソビエト連邦を中心とした東西冷戦が続いていたため、社会主義国家であったソ連に対して日本人は漠然とした恐怖をもっていた。そういった社会背景が本作にはうまく取り込まれており、退廃的な未来都市のイメージと組み合わさって、非常に魅力的な作品世界を作りだしている。

個性豊かな登場人物や、主人公を補佐する小型の二足歩行ロボット「メタル・ギアmk-II」などメカの造形も魅力的だ。スナッチャー対策部隊である「JUNKER」への配属から始まり、同僚の死、ライバルの出現、意外な敵の正体など、全体の構成も見事であり映画らしさを追求した作品となっていた。

なお、あまりにも壮大な構想のため制作に時間がかかりすぎてしまい、最初にリリースされたパソコン版は5章構成の物語のうち2章までしか収録されなかった。続きが収録された「SDスナッチャー」というRPG版が続いて発売されたがさほど話題にならず、完全版は4年後に発売されたPCエンジン版を待つことになる。

本作品は対象ハードウェアの機能制限などにより、移植ごとにその作品内容は異なっている。自分がプレイしたMSX2版は最初に発売されたPC-88版とほぼ同等の内容であったが、ゲーム本体にSCCカートリッジが同梱されており、装着することでSCC音源+PSGによる独特な音色を楽しむことができた。

このMSX2版はBGMが本当に素晴らしくて、中学生のころオープニングやエンディングの曲を何度も繰り返し聴いていた記憶がある。その後DTM用途にSCCカートリッジを鳴らすためのツールやMMLが開発されたほど、当時としては画期的な音質だった。

今日では小島監督が関わったオリジナル版をプレイすることが難しくなっているが、アドベンチャーゲームのファンなら一度はプレイして欲しい傑作だと思う。

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2014.5.28

アドベンチャーゲーム