金色の魔術師

2016.09.10  渡邉達朗

金色の魔術師

金ピカのフロックコートに身を包み、高い鷲鼻と吊り上がった険しい目をした金色の魔術師。「わしには七人の少年少女が必要なのじゃ」という言葉を残し、老魔術師は無気味な笑い声と共に消え去った! 名探偵金田一耕助の一番弟子を自認する立花滋少年は、失踪した同級生の行方を探すため、仲間の二人の少年と古びた洋館にやってきた。そして彼らは、恐ろしい光景を目撃した。あの金色の魔術師が、行方不明の同級生を悪魔の生贄にしようとしていたのだ……。

「金色の魔術師」は名探偵・金田一耕助が活躍する横溝正史の長編ジュブナイル。「大迷宮」のあとに書かれた作品で、雑誌「少年クラブ」に昭和27年1月から1年間にわたり連載された。金色の魔術師がなぜ少年少女を誘拐して不思議な事件を次々と起こすのか、子供向けの作品だからといって適当に誤魔化さず、きちんとした動機やトリックが設定されている点が素晴らしい。

悪魔を崇拝する博士が住んでいた幽霊屋敷、赤い星にナンバーのついたカード、秘密の落とし戸、宙に浮いた黒人の首、えたいの知れぬ液体で溶かされた少年、七つある悪魔の礼拝堂、からくり大時計、空気のように消えた少女、言葉を話す黒猫など、今回もサービス満点で楽しませてくれる。

金田一は健康をそこねて遠く関西の海べで静養中だったが、滋たちが手紙を送って相談すると、興味をもって今後も報告するよう指示する。このことを喜び、たびたび手紙を書いて金田一に相談する少年探偵団がじつに微笑ましい。

東京へ帰れない金田一が、滋たちの相談相手として推薦した黒猫先生もかなり風変わりだ。表向きは新宿の裏通りに店を出して人相や手相を見る大道易者だが、「黒ねこ千びき白ねこ百ぴき」という合言葉を知らないと会えない謎の人物。金田一のことを弟子と呼び、金色の魔術師の秘密を鮮やかに解明する。正体は簡単に想像できてしまうわけだが、なかなか心憎い演出で楽しめた。

<登場人物>
立花滋 … 「大迷宮」事件で活躍し一躍有名になった少年。
立花謙三 … 滋のいとこ。大学生。
村上達哉 … 滋の親友で少年探偵団の一員。あだ名はターザン。
小杉公平 … 滋の親友で少年探偵団の一員。あだ名はキンピラ。
山本史郎 … 滋に相談を持ちかけた少年。幽霊屋敷に忍び込む。
赤星博士 … 幽霊屋敷の元の持ち主。悪魔を崇拝する宝石狂。
一柳先生 … 滋たちの担任。山本史郎が行方不明だと告げる。
杉浦画伯 … 画家。東都劇場でやっている児童劇の美術担当。
雪子 … オリオン三姉妹の長女。孤児の三人は光風荘で暮らす。
月江 … オリオン三姉妹の次女。
花代 … オリオン三姉妹の三女。
椿三郎 … 金色の魔術師を演じる役者。住所は芝白金台町。
古川 … 東都劇場の係員。片足が悪く、片目もつぶれている。
金色の魔術師 … 七人の少年少女を生贄にすると警告した老人。
等々力警部 … 警視庁捜査一課所属の警部。金田一耕助の相棒。
金田一耕助 … ご存知名探偵。健康を害し関西の海べで静養中。
黒猫先生 … 金田一が滋たちの相談相手として推薦した老人。

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金色の魔術師

2016.9.10

横溝正史(金田一耕助)