「TRICK」はテレビ朝日系列放送のドラマシリーズ。自称天才マジシャン・山田奈緒子(仲間由紀恵)と自称天才物理学者・上田次郎(阿部寛)のコンビが、超常現象の裏にあるトリックを解き明かすというもの。監督の堤幸彦をはじめ、蒔田光治など「ケイゾク」のスタッフが多数関わっている。
笑いを誘う人物設定や台詞回し、ふざけた地名、裏番組いじりなど小ネタが非常に多いのが特徴。なかでも生瀬勝久演じる矢部刑事のヅラネタは鉄板であり、ほぼ毎回登場する。台詞の後に妙な効果音が付くなど、独特の演出も話題となった。
本ドラマにはコメディの要素がふんだんに盛り込まれているが、基本はミステリー(謎解き)であり、トリックを解明した事でやるせない結末を迎えるエピソードも少なくない。金曜ナイトドラマ枠で放映された第1・第2シリーズはこの笑いと切なさのバランスが素晴らしかった。
奈緒子のルーツや父・剛三が死の間際に話した霊能力者の存在など、シリーズの根底に流れる重いテーマがメインストーリーとして語られるのだが、暗くなりすぎないよう巧妙にギャグを織り交ぜて視聴者を笑わせてくれる。このあたりの配慮が実に見事だ。
それぞれのエピソードは陰惨で救いのないものが多いのだが、不思議と余韻は悪くない。特に第1シリーズの「母之泉」「黒門島」、第2シリーズの「六つ墓村」「サイ・トレイラー」は名作だと思う。佐野史郎の“ゾーン”なんて、一生忘れられないほどのインパクトがあった。
ゴールデンに進出した第3シリーズ以降はギャグ要素が強くなりすぎ、主要登場人物のバックグランドを掘り下げるような重めの話も無くなってしまったので、物語の神秘性が薄れてしまったのは残念だった。