最近Webシステム案件のディレクションを担当することが多く、要件定義書や仕様書などを書く機会も多いのだが、ドキュメント作成をいかに効率的に行うかというのが、とても悩ましい問題となっていた。
多くの企業と同様、勤務先では文書作成にMicrosoft Officeを購入しており、図表作成の容易さからPowerPointを頻繁に利用しているのだが、もともとプレゼンテーション用に作られたソフトということもあり、文書作成能力が貧弱すぎて辟易していた。
例えば、目次や索引を自動生成できず、目次の階層に従った自動的な番号付けや参照リンクの挿入もできないため、「[3.4 CSVフォーマットについて]を参照してください」といった文章を書いて、そのあとの修正で章の番号などがずれた場合、全て手で修正しなければならなかった。これは本当に頭にくる。
また、既存のドキュメントを引き継いだ際によくあるのが悪名高いExcel方眼紙を用いたドキュメント。全てのインデントをセルで行い、改行ごとに別セルになっているため、メンテナンス・検索という面では最悪だった。
前置きが長くなったが、そういうストレスをかかえた自分のような人間向けに書かれた本が、今回紹介する「エンジニアのためのWord再入門講座」だ。
本書では、Wordを利用した「メンテナンス性が高くかつ見栄えがよい開発文書」の作成方法が丁寧に解説されている。この業界にいる人はわかると思うが、開発者の多く(自分も含めて)はWordが嫌いだ。著者はその理由をWordを本当に理解していないためだと述べ、各機能の使い方についてかなり踏み込んだ記述を行い、有効に活用するメリットを訴えている。
「スタイル」「セクション」「ヘッダ/フッタ」といったレイアウトの基本構造から、「フィールド」機能の使い方など、読み進めるほどに自分がいかに理解していなかったか、使いこなせていなかったかを気付かされる。コンピューティングの領域において「DRY(Don’t Repeat Yourself!)」という考え方があるが、本書ではこれが徹底されているのも好ましかった。
システム関連のドキュメントを日々作成されている方は、ぜひこの本を読んでもらいたい。著者に共感するところが少なからずあるはずだ。