池袋サンシャイン劇場まで演劇集団キャラメルボックスの舞台を観に行ってきた。演目は「容疑者Xの献身」。東野圭吾の第6回本格ミステリ大賞、第134回直木賞受賞作が原作であり、福山雅治主演で映画化も行われた人気作品だ。
当然原作や映画版と比較されるわけだが、映像化という観点で見た場合、個人的には舞台の方がしっくりきた。
映画版もドラマと比べるとかなり原作を尊重しているのが解ったが、リスクを犯してまで母子を救おうとする石神を演じるにはハンサムな堤真一はどう考えても不適格だ。冬山登山のシーンも不要。舞台版では成井豊の脚本・演出に西川浩幸の演技が加わって、ラストシーンのカタルシスは素晴らしいものだった。
映画版では他にも不満点がある。原作では同じ大学出身の草薙刑事が、天才数学者・石神と天才物理学者・湯川(=探偵ガリレオ)を結びつける役割を果たすのだが、ドラマからの繋がりで出演せざるをえなかったであろう柴咲コウが草薙の役割を一部奪ってしまったため、草薙役の北村一輝も結果的に存在感が薄くなってしまっていた。
舞台版では靖子から好意を持たれる工藤を三浦剛が演じているが、これも映画版のダンカンに比べるとはるかにイメージどおり。というか、ダンカンに対して堤真一が外見上のコンプレックスを抱くとか普通に考えておかしいだろう……。
この作品、キャラメルボックスのファンにとっては物足りない、地味な作品ではあると思うが、ストーリーは素晴らしいので興味のある方はぜひ劇場に足を運んでもらいたい。