角川映画誕生40年記念企画「角川映画祭」が7月30日から全国で順次開催された。「人間の証明」「蘇える金狼」「野獣死すべし」「魔界転生」「セーラー服と機関銃」「蒲田行進曲」「幻魔大戦」「探偵物語」「時をかける少女」「ぼくらの七日間戦争」など48作品を取り揃えており、当時を懐かしむ人々で連日賑わったようだ。
東京・角川シネマ新宿での最終日にあたる9月2日の最終回は、角川映画の第1弾作品であり、巨匠・市川崑監督の名作「犬神家の一族」(1976年版)が上映された。金田一耕助が登場するこの映画を観たことはなくとも、白いゴムマスクを着けた不気味なスケキヨの姿に恐怖を感じた方は多いのではないだろうか。
角川シネマ新宿のロビーには犬神佐清の等身大人形が鎮座しており、記念写真を撮る人気スポットになっていた。不気味なのが実にいい。
角川映画祭の公式パンフレットも非常に凝った装丁で驚いた。ちゃんと角川文庫と同じサイズで作られており、実際の文庫本のようなカバーも付いている。
デザインも洒落ており、所有欲を満たす逸品。カバー裏の遊び心も素敵だ。
今回一番の目的は、市川崑監督がこだわり抜いた映像を劇場の大きなスクリーンで確認すること。繊細かつ大胆なタイポグラフィ、古い日本家屋の重厚な空気感、金色に怪しく浮かび上がる襖、大広間に集められた犬神家の人々、短いカットの切り返し、唐突にストップモーションになる演出、そして例の水面から突き出た足など、印象的なビジュアルの数々は強く印象に残った。
石坂浩二、高峰三枝子、加藤武、島田陽子、坂口良子などキャスティングも素晴らしい本作。「よ~し、わかった!」「佐清、頭巾を取っておやり!」「生卵」「面白いことしてるわねぇ。あたしも仲間に入れてよ」「犯人はあなたですね」「あの人のこと、忘れられない」といった名台詞や、哀愁あふれる大野雄二のテーマ曲「愛のバラード」を多くの観客とともに聴けたのも嬉しかった。貴重な上映を観ることができて本当によかったと思う。
なお、角川シネマ新宿では12月10日から12月22日までアンコール上映が決定したそうだ。角川映画祭ラストの「犬神家の一族」は全席完売・満席という、公開から40年が経過した映画とは思えないくらいの盛り上がりだったので、今日入れなかった方や見逃した方にはぜひ訪れていただきたい。