
軽井沢は夫婦そろって大好きな場所。たびたび避暑地として利用しているし、昨年は軽井沢彫の家具を購入しに旧軽銀座を訪れた。震災直後に石の教会で結婚式を挙げた日のことも忘れられない思い出になっている。

そんな軽井沢を象徴する存在が、1894年に西洋式ホテルの草分けとして開業した「万平ホテル」。かねてより一度は泊まってみたいと思っていたのだが、ありがたいことに奥さんが誕生日祝いという名目で招待してくれた。

江戸時代後期に旅籠「亀屋」として創業。9代目当主の佐藤万平が明治時代に外国人を迎える「万平ホテル」に改変し、以来国内外問わず多くのゲストをもてなしてきた。

三島由紀夫や室生犀星といった文豪を始め、数多くの偉人達が宿泊したクラシックホテル。ジョン・レノンの愛した宿としても有名で、現在でも外国人ゲストが後を絶たない。

アルプス館と別館を繋ぐ廊下の脇に設けられた万平資料館には、ジョンレノンが滞在中に弾いていたヤマハのアップライトピアノが展示されている。ジョンはこのピアノをとても気に入っていたそうだ。

万平ホテルにはデザインの異なる4つの館がある。今回宿泊したはウスイ館の客室は、アンティークの調度品が配され、窓からは風景画のような美しい庭の景色が望める素敵な部屋だった。

46平米ほどのツインルームで広さも十分。

バスルームはノスタルジックなタイル張りで、バスタブとは別にシャワーブースが備わっている。

軽井沢彫りが施されたルームキーも、歴史を感じさせる装いで素晴らしい。

部屋に荷物を置いて落ち着いたら、さっそく旧軽井沢銀座へ散策に向かう。万平ホテルからはオーディトリアム通りを使うと徒歩10分ほどで着くのでとても便利。

オーディトリアム通りを抜けると、軽井沢観光会館の前に出る。

今年は標高の高い軽井沢でも気温が高く、とにかく冷たいものが食べたかったので、まずはミカドコーヒーへ向かう。ここのモカソフトは何度食べても美味しい。今日のような暑い日は最高だ。

旧軽銀座に来た目的は、万平ホテルの家具も製作している軽井沢彫の老舗「一彫堂」。去年訪れた時とは品揃えが変わっており、いい品がたくさんあったので、小物入れなど気に入ったものをいくつか買い求めた。

万平ホテルのメインダイニングルームでいただくディナーは伝統のレシピに基づく本格フレンチ。中庭に面したメインダイニングはステンドグラスが印象的で、天井の木の細工や照明も味わい深い。

テーブルには大正時代から使われているメニューカードが置かれている。ディナーコースの名は「くつろぎ」。

鮎のフリット、アンチョビ入りマヨネーズソース味噌風味。

豆苗と野菜と鶏のブイヨンスープ。

イサキのポワレ、トマトソース。

国産牛フィレ肉のグリル、シャンピニオンソース。

締めにデザートと珈琲をいただく。古き良き社交場の雰囲気が残るレストランは風情たっぷりで楽しかった。

クラシックホテルのバーはどこも趣きがあってよいが、ここ万平ホテルも例外ではない。

オーセンティックバーならではの洗練された雰囲気を醸し出す店内。ここでしか味わえないカクテルに魅かれた常連客が多く、遠方から訪れたゲストも虜になっていく。

万平ホテルで迎える朝はとても爽やか。気温も低く快適だ。

朝食はメインダイニングルームでのアメリカンブレックファストか、和定食かのどちらかを選べる。

朝日に輝く庭の景色を眺めながらいただく朝食はとても気分がいい。

卵料理はボイルドエッグ・フライドエッグ・スクランブルエッグ・プレーンオムレツから選ぶことができ、お肉もハム・ベーコン・ソーセージから選択可能。老舗ホテルのオムレツは間違いない美味さだった。

朝食のあとは万平ホテル周辺を散歩。空気は綺麗だし、木漏れ日が大変気持ちいい。

岩肌が苔むした様子を眺めるのも楽しかった。

日本を代表するクラシックホテルであり、ジョン・レノンがこよなく愛したという「万平ホテル」で過ごす一夜は特別なものだった。このような機会を与えてくれた奥さんに心から感謝したい。