井の頭線駒場東大前駅から10分ほど歩くと目黒区立駒場公園へ着く。旧加賀藩主で前田家第16代当主・利為の邸宅が残されており、旧前田家本邸とも呼ばれる。昭和初期に建てられた洋館・和館は共に保存状態がよく、平成25年に国の重要文化財に指定された。

元々前田家の上屋敷は本郷にあり、明治維新後もそこに本邸を設けていた。関東大震災後に東京帝国大学と土地を交換し、現在の駒場を新邸と決定。生活の場となる洋館と迎賓館として利用する和館を建てたのだという。東京都が買収した旧前田邸は昭和42年に駒場公園として生まれ変わり、その後公園の管理が目黒区へ移管されて現在に至る。

石造りの厳しい門を抜け、左手に進むと木々の間から素敵な和館が見えてくる。主に外国からの賓客をもてなすために建てられ、四季折々の前田家の行事にも用いられた。

1階は40畳近くなる続き間を中心に、畳廊下や入側・縁側でぐるりと囲む特徴的な空間。縁側から庭園をゆったりと眺めている時間はとても贅沢に感じた。

昨年保存整備工事を終えたばかりの洋館は、イギリスのカントリーハウスを思わせる外観が美しい。スクラッチタイルの壁と、張り出した車寄せにとんがり屋根の塔が印象的。

中庭に面したステンドグラスから大階段に柔らかい光が差し込む様は見事だった。

こんな素晴らしい建物が入場料無料、写真撮影も自由なのは本当にありがたい。